COLUMN 架線張替篇 Apr. 2016 Update

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SAFE & SECURE 001摩耗した架線を張り替える
−架線の仕事編−

今回CM・ポスターで切り取ったのは、メトロの生命線ともいえる架線(電線)の張替え作業について。
ここでは、CM・ポスターだけでは伝え切れなかった「架線の仕事」について、もう一歩掘り下げてみたいと思います。
ちょっとだけ東京メトロ通になれる社会科見学、略して「メトロ科見学」へ、ようこそ!

01ちょっと深堀。「架線」という生命線。

レールの真上を見上げると、必ずあるのが電車線。
東京メトロではこれを架線(ガセン)と呼んでいます。
この架線こそ、電車が走る力=電力を送る生命線なのです。

電車はどうやって走るのですか?
架線から流れる電気をキャッチして走っています。

変電所から架線に流れた電流を、電車の上についているパンタグラフがキャッチして、電車が走ります。その後電流はレールに流れて変電所へと返っていきます。簡単にいうと、豆電球が光るしくみと同じなんです。

架線にはどんな種類がありますか?
大きく3種類、「剛体架線」「カテナリ架線」「第三軌条(サードレール)」があります。
  1. 1:剛体架線
    トンネル上にT形材を吊し、その真ん中にトロリ線(電流が流れる線)をセットする形式の架線です。CM・ポスターに映っているのもこの剛体架線です。
  2. 2:カテナリ架線
    電柱に吊るす形式の架線です。線が1本のシンプルカテナリ、2本のツインシンプルカテナリ、1本だけど太いヘビーシンプルカテナリなどなど、さまざまな形があります。線の本数や太さにより、供給できる電流の量が変化します。
  3. 3:第三軌条(サードレール)
    電車の上部ではなく、線路横に設置された架線です。第三のレールに見えることからこの名前がつきました。メトロでは銀座線、丸ノ内線のみがこの第三軌条(サードレール)です。
架線にいろんな種類があるのはなぜですか?
地下や地上など、電車が通る場所によって適した形があるからです。

たとえば、「カテナリ架線」は吊り下げるための高さが必要なので、地上向き。
東京メトロといえば地下鉄ですが、もともと日本の地下鉄は、架線をレール横に配置した「第三軌条(サードレール)」からはじまりました。
その後、他社線との相互直通運転が開始されるにあたり、地下の狭い空間でもトンネル上に設置できるよう進化したのが「剛体架線」です。

架線の各部はどんなしくみですか?
剛体架線の断面図をご紹介しましょう。

昔と今で、架線の構造は違いますか?
技術の進歩とともに、架線も日々進化しています。

電車の本数・乗車率の増加に合わせて電線の負荷が増えています。電線の摩耗を減らし強度を高めるために、架線も日々進化しています。素材は導電鋼からアルミに代わり軽量化され、直近では副都心線用に、縦長・薄めの剛体架線が開発されました。

02もっと深堀。「架線」を守る仕事。

電車が走り続ける限り、架線を守る仕事があります。
もっと深堀していきましょう。

架線を守る仕事とはどのようなものですか?
電気部が行う
①日々の点検
②トロリ線の張り替え
③付属部品の修理や交換業務です。

架線には警報装置がありません。つまり、何かミスがあっても機械に教えてもらうことができません。一歩間違うと、電車の生命線である電気の流れが止まってしまう、大きな責任を伴う仕事です。
そのため、日々の点検や架線の張替えを行う現場には、並々ならぬ緊張感が漲ります。電気部で働く社員に求められるのは、電気的な知識に加え、目で見る力、違和感を感じ取る力。まさに、社員自身が「チェッカー」なのです。限られた時間の中で、経験とバランスによって身につけた「何か変だ」と気づく職人的な感性が、架線と電車の安全を支えています。

架線の点検はどのようにしていますか?
目視で行っています。
1mmの減りも見逃しません!

架線の点検は終電後の深夜に行われます。「トロリ線の減りをチェックする」という点検項目の場合、モーターカー(写真1)を時速10キロほどで走らせながら、上に乗った作業員が架線を両側から挟んで目視点検を行います。トロリ線に減りがあった部分は1mm単位で発見。ダイヤルゲージという測定器で測って記録し(写真2、3)、架線上にもチョークで印をつけていきます。点検できるのは1日で2〜3キロほどです。

トロリ線はなぜ減っていくのですか?
摩耗するからです。

摩耗とは、硬い材質のものがすり減ること。トロリ線は「物理的」「電気的」な2つの要因で摩耗していきます。

  1. 1:物理的な摩耗例
    • ・架線の重さでたわみが生じ、そこをパンタグラフが擦ることにより摩耗します。
    • ・レールがカーブするときに、パンタグラフが傾斜してトロリ線に当たり、片側のみ摩耗します。(片減り)
    • ・電車の発車、停車、加速などでパンタグラフから圧力がかかり摩耗します。
  2. 2:電気的な摩耗例
    • ・電車を発車するとき、加速するとき、止まる時など、電気を「オン」にしたときに多く流れる電流によって摩耗します。

新しいトロリ線の太さは11.7mm。(種類により異なる)
太さが5.5mmにまで減るとイヤーボルトを削ってしまうため、6.5mmになる前に張替えを行います。

トロリ線とトロリ線の継ぎ目はどうなっていますか?
継ぎ目の段差を円滑にするために、スライダーを取り付けています。

スライダーとは、パンタグラフとトロリ線の継ぎ目部分の段差を解消するために沿わせる銅線のことです。

03だいぶ深堀。「架線」の張り替え。

最後は、CM・ポスターでもメインに取りあげた
実際の架線張替え作業について深堀していきます。

架線の張替え作業はどのように行いますか?
次のステップで実施しています。
  1. 1.事前準備。ミーティングで検査項目や役割分担を確認し、必要な道具を
    準備します。監督者は総合指令所にその日の分担を登録します。
  2. 2.トロリ線が巻かれたドラムをモーターカーにセットします。
  3. 3.モーターカーで現地へ向かいます。
  4. 4.摩耗したトロリ線を取り外します。
  5. 5.新しいトロリ線をドラムから伸ばし、整直器でまっすぐにします。
  6. 6.トロリ線を取り付けます。
  7. 7.ボルトを締めて固定します。
  8. 8.安全確認・工具の確認をして終了です。
張替え時には、どんな機械や道具を使いますか?
電気部専用のモーターカーや、特殊工具を使っています。

  • 電気部モーターカー(写真1):軌道上を走る車。電気部のモーターカーには、高い位置にある架線をチェックするための昇降機がついています。
  • ドラムブレーキ:トロリ線がばらけるのを防止する器具です。
  • タワー車:足場になります。
  • 整直器:トロリ線の巻きぐせを直す器具です。
  • ゲージ棒(写真2):架線の高さをチェックし、パンタグラフが当たる部分にきちんと収まっているか確認する棒です。
  • ボルトクリッパー(写真3):トロリ線をカットする大型のハサミです。手動式、油圧式の二種があります。
張替え作業にはどのくらいの時間がかかりますか?
張替えるトロリ線の長さによって異なりますが、
一部区間の張替えを行う場合、
終電後から始発までの2〜3時間という、
限られた時間の中で実施します。

メトロ科見学「架線の仕事編」を最後まで読み進めてくださりありがとうございます。
みなさまはもはや「架線」通。
ここで改めてCM・ポスターをご覧いただくと、新たな発見があることまちがいなしです。ぜひご覧ください!

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